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【医療・看護の現場と英語力】日本で外国人が病院に救急で運ばれたら。シミュレーションしてみました

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東京のど真ん中で、外国人が急病で病院に運び込まれたらどうなる?

前回記事:【医療・看護の現場と英語力】けっこうヤバイ!?現役医師にインタビュー!

で、医療・看護の現場では、外国人の受入れにさまざまな課題があることが明らかになりました。では、実際に外国人患者が現れた時に、現場でどういうやりとりが行われるのでしょうか?今回は現実に起こりうる状況を松下医師と一緒にシミュレーションしてみました。

1.外国人旅行者、救急で運ばれる
1-1.突然の腹痛
1-2.外国人の受入れ先がない?
1-3.病院スタッフと外国人患者とで言葉が通じない
1-4.大使館に電話するも・・・

2.外国人患者は深刻な状態に
2-1.重症膵炎の可能性
2-2.難しい判断を迫られる
2-3.死亡リスクがある方法は説明なしには行えない

3.一夜明けて
3-1.無事、退院したものの・・・
3-2.シミュレーションを終えて

1.外国人旅行者、救急で運ばれる

1-1.突然の腹痛

場所は東京新宿南口付近、夜21時。女性の若い外国人旅行者がバックパックを背負って1人、歩いている。旅慣れた様子だ。日本が好きで今回が2度目の来日になる。これから夜行バスに乗って地方の観光地へ出向くのだろうか。

突然、彼女が道にうずくまった。お腹を抑えて少しも動けない。それを見つけた若い男性が声をかける。しかし反応がない。声を出すのも辛いようだ。男性はあわてて救急車を呼んだ。

救急要請により、まもなく救急車が到着した。隊員が声をかけるが呼びかけに応じない。

1-2.外国人の受入れ先がない?

新宿C病院の救急外来に、救急車から受入れの要請がきた。30代に見える白人女性がお腹を抑えて痛がっている様子。血圧などの現状報告の後、隊員は深刻そうに伝える。「実はA病院、B病院には断られてしまいました。日本語は通じません。どこの国の人かもわからない。受け入れ可能ですか?」

当院では外国語に対応できないが、他で受け入れられないこともわかっているし、当院は地域の基幹病院だ。コミュニケーションの問題はあるが、受け入れる以外選択肢はない。

「わかりました、来てください。」

1-3.病院スタッフと外国人患者とで言葉が通じない

患者が運び込まれてきた。荷物を看護師さんに渡す。「パスポート探して!」
患者に話しかけるが返事ができない。それでも肩を叩き赤十字の印を見せて病院だと伝える。お腹を触って痛いところを確認する。

検査のため採血する。腕を抑えたところ、患者はびっくりして暴れだした。パニック状態である。「落ち着いて」と言うが通じない。仕方ないので数人で押さえつけて採血、そのまま腹部エコーの検査を始める。

「なんだか膵臓が腫れているように見える。膵炎かな?CT取らなきゃだけど、アレルギーは?

1-4.大使館に電話するも・・・

看護師が荷物からパスポートを見つけた。D国から来たらしい。英語圏だ。しかし英語が話せるスタッフは当院にはいない。いや、正確にはいるのだが、シフトの関係でいま、いないのだ。

「国際電話番号あります!」

「大使館に連絡して、そこに連絡とってもらって!!」

すぐに大使館に電話してもらう。母国に連絡するのは今じゃないくていいのでは、と思うが、今はこの患者にアレルギーがないか緊急で調べる必要があるのだ。

2.外国人患者は深刻な状態に

2-1.重症膵炎の可能性

血液検査の結果が出た。膵臓(すいぞう)の酵素の値が高い。膵炎の疑いが非常に高い。

膵炎の重症度を調べるために、造影剤を使ったCT検査をしたいが、アレルギーがわからない。造影剤とアレルギー反応を起こすとアナフィラキシーショックが起こる。アナフィラキシーショックが起こると血圧が下がり、喉が腫れて窒息する可能性もある。日本人ならここでアレルギー反応が起きる可能性を説明し、同意を得て行う検査だ。
が、どうしよう。通訳を呼ぶにも夜中の21時。すぐに呼べない。

頼みの綱の大使館も、営業時間外でつながらない。

2-2.難しい判断を迫られる

さて、どうしよう。

まず単純CTを取って、膵炎の所見があるか調べる。
膵炎がありそうだとわかったら他のスタッフと相談して、気管挿管の準備をして、造影CTをするか、そうせずに他の情報から総合的に判断して膵炎の重症度を推定して治療に入るか。

2-3.死亡リスクがある方法は説明なしには行えない

病状や検査の説明も、入院しなければならない理由も、正確には伝えられない。結局、造影CTは行わず、重症膵炎とみなし、集中治療室に運んで治療を開始する。死亡するリスクを伴う検査を同意なしに行うことは倫理的でないと考えたからだ。この患者は保険に入っているだろうか、いや、とにかく今は治療に専念しよう

3.一夜明けて

3-1.翌朝。大使館に連絡する

「あなたの国の人が救急で運ばれ、入院しています。家族に連絡してください。」

母国の家族に連絡してもらい、日本にいつ来れるか聞いてもらったが、お金がないのですぐには来れないそうだ。代わりに大使館の人が病院に駆けつけてくれた。
これまでの経緯や病状について説明し、患者さんに伝えて下さいと依頼する。初めて患者自身に伝わった。

大使館の人には、重症膵炎は死亡リスクもあるので、そのことを家族に伝えてくださいと伝言を頼んだ。

3週間後、患者は無事退院した。

3-2.無事、退院したものの・・・

患者は助かったが、問題は治療費

海外渡航者保険に入っていたので、治療費は海外の保険会社から出た。しかし重症膵炎は高額の治療費がかかる。今すぐ全部は払えない。

さてこれからどうなるのか・・・

3-3.シミュレーションを終えて

今回、架空の設定で、外国人の急患が病院に来たらどうなるかをシミュレーションしました。

言葉が通じないことで、患者は不安、興奮状態になってしまいました。そしてなによりリスクを伴う検査の説明ができないために、非常に難しい判断を現場が強いられることになります。今回のシミュレーションでは、診断が功を奏して患者は助かりましたが、全く逆の結果も起こりうるのです。

また、このシミュレーションでは入院中のことが触れられていませんが、当然3週間もの間の入院にはさまざまな事が起こったはずです。不安になる患者さんの心のケア、治療を進めていくにあたっての説明、意思確認の難しさなど。

治療費の問題も残っています。

これは今日にでも十分起こりうる事態です。みなさんが「医療・看護現場と英語」について、「英語の重要性」について考えるきっかけになれば幸いです。

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梅澤 暁

金融、人材派遣のベンチャー企業で販売・営業職、一部上場企業の経理を経て、2015年株式会社留学情報館に総務部長として入社。2017年より”English Career"責任者。

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